Bishop Records blog

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『住友郁治/Oratio 2』 音楽誌レビュー

レコード芸術 (1)
 音楽誌「レコード芸術」「CDジャーナル」それぞれの12月号に、CD『住友郁治/Oratio 2』をお取りあげいただきました。どちらもなかなか好評価。プロデューサーとしては、ほっとした思いと身の引き締まる思いの両方。ミキサーとしては、「レコード芸術」の録音評での評価で、苦労が報われた思いでした。

 クラシックのワンポイントステレオは、私にとっては難しい録音のひとつです。録音するだけならこれほど簡単なものもありませんが、「良い」録音とミックスとなると大変なことになります。ステレオ録音の基礎を知っていることは大前提、その上でS/N比、音像、サウンドイメージという技術的な基礎でミスをしないだけでも冷や汗もの。「何が正解か」を解っている事と、それを実現する技術の両方を問われている気がします。そのうえでプレイヤーの表現を理解して、そこが伝わりやすい形でのミックスを目指すことになりますが、今回のようなロマン派の難曲揃いだと、それ以前の曲の下調べや、実際にスコアを追っていく作業だけで手いっぱいでした。

 批評家の皆様、編集部の皆様、良い形でご紹介いただき、ありがとうございました。

http://bishop-records.org/onlineshop/article_detail/EXAC013.html



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  1. 2015/11/21(土) 17:06:16|
  2. EXAC013
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ラフマニノフに関する話など

PB020369.jpg ピアニストの住友郁治さんが、リハーサル帰りに事務所に遊びに来てくれました。クラシック・ピアニストとしてだけではなく、音大で教鞭を執る方でもあるので、話に含蓄があります。会話は多岐に渡ったのですが、ラフマニノフに関する部分の話が、ラフマニノフの作品傾向、作品と楽器の関係など、興味深い内容を含んでいましたので、抜粋して記載させていただきます。

*****
Q. 新作の特徴のひとつはラフマニノフの選択と感じます。住友さんがラフマニノフを取り上げるのは予想外でした。なぜラフマニノフを取り上げたのですか。

A. 昨年のリサイタルではベーゼンドルファーを使ったが、ラフマニノフをベーゼンドルファーで響かせたら面白いんじゃないかと思った(笑)。ラフマニノフがアメリカに渡って最初に契約をしたのはスタンウェイ。だから、彼の書いた作品も、スタンウェイというピアノの音の傾向に沿ったものになった。これを、ベーゼンドルファーで鳴らしたらどうなるか、これを想像したら、良いイメージが出来たし、意義ある挑戦に出来るとも思えた。

Q. プレイはもちろんですが、響きも良かったですね。表現の素晴らしさのほかに、ピアノとホールのアコースティックの調和、調律の影響もあったと思いますが。

A. Mさんの調律ですからね。ピアノの調律というのは2オクターヴで合わせていくものですが、Mさんは恐らく3オクターヴで合わせている。ピアニストが弾いたら「おっ」と感じる調律と思います。常識にとらわれない柔軟な発想で、プログラムに合わせて「こういう音で鳴ったら良いんじゃないか」というイメージを強く持って調律に臨んでおられる気がします。

EXAC013.jpgQ. 私にとってのMさんの調律のイメージは、いきなりオクターヴが崩れる寸前の良い音を作ってくるというイメージですが。

A. そうそう。リサイタルが進んでいく過程で丁度よくなるように合わせるのが、リサイタル時の調律の王道だと思いますが、いきなり良い音なんだよね(笑)。やはり、「このプログラムにはこの音で」という音のイメージが強いのでしょうね。

Q. 住友さんの録音に関わると、徹底してロマン主義のあの官能性と向き合う事になり、その官能性のサウンドのあり方に腐心することになります。つまり、私は住友さんの音楽にロマン派の官能を強く感じているわけですが、ロマン派以前や、あるいは以降の音楽はどのように捉えていらっしゃるのでしょうか。

A. ロマン派とはいえ、ラフマニノフも対位法なんですよ。それを突き詰めていくほどに、ひとつのメロディがどんどん短くなって、最終的には断片の切り貼りのようになっていく。そうなると、対位法としては精緻化して完成度が高まりますが、しかし人間の感覚とは離れていく。あのリサイタルで取りあげた「鐘」あたりは、短い断片ではなく、メロディを強く感じます。どの時代でも、どこに行っても、ラフマニノフは「鐘」の演奏を求められたそうですが、そこには人間が音楽に求める普遍的な何かがあるのだと思います。

Q. 近現代でいえばヴェーベルンなども対位法が目につきますが、あれも感覚で捉える音楽というよりも、論理的に捉える音楽という感じがします。そういう事でしょうか。

A. ヴェーベルンも対位法として捉えると実に精緻で素晴らしい、しかし聴く感覚として捉えると、人間的な感覚から遠い感じがします。話を戻すと、対位法という意味でいうと、バッハ以前にある対位法は、不協和音などの感覚上の不具合が多い。ところがバッハになると、この問題が解決する。(論理性が言及されがちな)バッハは、実際には音楽を美しく響かせるという点から始まったのではないかと思うのです。
 現代の視点でいうと、バロック期の音楽は、現代に比べると不自由です。例えば、鍵盤は5オクターブで、今よりも2オクターブも狭い。今の視点でいえばここに制限を感じもしますが、同時に強い創造力も感じるのです。状況に制限がある故に、作り手がクリエイティブであるという事ですね。現代はその逆で、制限が少ない分だけ、作り手側が創造性に欠く嫌いがあるのではないか。しかし、聴く側はバロックをすぐに通り過ぎて古典派へと入っていくという。

Q. 個人的にはバロックは完成度の高い素晴らしい音楽と感じますが、古典期はバロックほどの素晴らしさを感じません。例えば、バッハで好きな音楽は何ですかと言われれば色々な曲が思い浮かびますが、ハイドンでは私はそれを挙げることが出来ません。

A. それはやはりハイドンの頃が、また人間の感覚的なところから離れていたという事ではないでしょうか。

*****
 個人的には、「感覚的な受け取りを優先する」という音楽的主張、そして「そこを基準に評価するのであれば、ロマン期の西洋音楽は最も感覚に訴える音楽と言えるのではないか」という主張があったのかな、と感じました。たしかに、クラシックのリサイタリストとしては大変に柔軟な活動を展開しながら、音楽そのものは徹底してひとつの美観を貫いているミュージシャンであるという気もします。

 他にも、現代曲、西洋音楽と日本音楽の比較、言葉を使う歌音楽と器楽の差、オーディオの話など、話は尽きず。楽しいひと時を過ごさせていただきました。

http://bishop-records.org/onlineshop/article_detail/EXAC013.html


  1. 2015/11/02(月) 23:52:22|
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