仕事の切れ目に、昨年リリースさせていただいたビショップレコーズ作品の雑誌記事の整理をしていました。遅きに失した感がありますが、ずっと紹介させていただきたかったのが、ラティーナ2016年1号の「関係者が選ぶベストアルバム2015」。徳永伸一郎様、谷本雅世様、清川宏樹様らが自身のベスト10に『ジョー・パワーズ - 青木菜穂子 / Jacaranda en Flor』を選出くださいました。また、同作品のサンプル音源を下記ページからも試聴できるようにしました。
http://bishop-records.org/onlineshop/article_detail/EXAC012.html ラティーナ2016年1号の年間ベストは大変に面白く、ビショップレコーズ以外の作品でも個人的に素晴らしいと感じていたものが幾つも選ばれていました。例えば、センヤワ『メンジャディ』、選出は大石始様。竹に弦を張った自作擦弦楽器とヴォーカリゼーションによるユニットですが、インドネシアの地域性とクラブ系アンビエントの都市性の融合が刺激的な音楽。ケチャのヴォーカリゼーションと擦弦楽器の音型反復を軸にしたインプロヴィゼーションからトランスミュージックを展開しており、格好いいです。
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2016/02/25(木) 09:31:45 |
EXAC012
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2016年2月21日渋谷公園通りクラシックス、照内央晴(pf)×松本ちはや(perc) Duo即興、公開レコーディングライブ。まだ自己名義作を発表していない演奏家が、自らのルーツを全身全霊で叩きつけてきた渾身のパフォーマンスだった。閉じた「即興のための即興」ではなく、様々な音楽を前提にした汎性を問われる現代即興として、間違いなく一流。
ピアノは一聴してフランス近現代からの影響を感じさせ、それを即興演奏に組み込む。この時点で、音楽として充分すぎるほどの魅力を感じた。また、パワープレイで場を制御しに行けるだけの技量を持ちながら、力に頼らずに全体を構成し切った点は、高い演奏能力と作曲能力の双方を問われる現代の即興音楽を演じるに充分な資質と能力を示している。音楽を「習った」優等生タイプでなく、独力で全てを選択・鍛え上げてきたミュージシャン特有の強さも感じた。
パーカッションの演奏も見事。国内外の如何なる即興音楽シーンでも通用するだけの技術を既に獲得していると思う。ただし、表現がダイナミクス方面に偏っており、また自分で音楽の劇的構成を作れない。実験や無意識に逃げない、意志ある「音楽的な」即興に踏み込みたいのであれば、反応や音楽全体の増幅だけではなく、音が向かう先の明確なデザインを自ら描く必要がある。
デュオ全体のパフォーマンスは、圧巻と言えるほどに素晴らしかった。演奏のレベルも、具象しえた音楽も、世界の即興音楽史上に残してしかるべき見事なものであったように思う。即興演奏に限らず、最近これほどのライブパフォーマンスを見た記憶がない。ただ、伝統的な西洋芸術音楽型のクライマックスを持つドラマ型の音楽を狙った以上、クライマックス後のコーダ処理は課題かも知れない。しかし、音楽のライブ・パフォーマンスで、しかも即興で、完全は不可能。この程度の些細な弱点など消し飛ぶほどの、すべてをぶつけてきた素晴らしいパフォーマンスだった。
2016/02/22(月) 10:13:46 |
未分類
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来月3/11に、ジャズ/フリージャズ系のトランぺッターであるワダダ・レオ・スミスのリーダー作品『ゴールデン・ハーツ・リメンバランス』を発表させていただきます。ちゃぷちゃぷレコード原盤、トータルミュージックの傑作ですが、このたびビショップレコーズより、新たに日本語ライナーノートをつけて再発させていただく運びとなりました。フリージャズの文脈でプレイヤーとして捉えられる事の多い音楽家かと思いますが、実際にはプロデビュー後に大学で民俗音楽を専攻するなど、大局的に音楽を捉え、非常に進歩的な音楽を創造するリーダー/コンポーザー的な資質を持つ、優れたアーティストと思います。
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『ワダダ・レオ・スミス & ンダ・カルチャー / ゴールデン・ハーツ・リメンバランス』 (Chap Chap / Bishop Records, EXIP0410, \2,315yen +tax)
インドと日本の伝統楽器に、米ジャズが交錯する。フリージャズの雄・ワダダ・レオ・スミスが97年に発表したトータル・ミュージックの傑作。
ワダダ・レオ・スミスは、1941年生まれの管楽器奏者。トランペット/フリューゲルホルンなどの金管楽器を中心に演奏する。アート・アンサンブル・オブ・シカゴやアンソニー・ブラクストンなど「シカゴ前衛派」と呼ばれた、60年代フリージャズ第3世代の中で頭角をあらわし、同シーンを中心に活躍した。本作は、97年にハリウッドで録音されたセックステット編成による録音。編成の時点で大変に独創性が発揮されており、トランペットとチューバの金管セクション、ピアノとドラムがジャズベース、ここにバンスリやタンブーラというインド楽器、これに日本語と英語を往復する朗読や能管などが重なる。全曲にスミス作のクレジットが入るほどの構成力あるデザインの上で、グループ全体でフリー・インプロヴィゼーション的な疾走感ある演奏が展開される。スミスの、プレイヤー/コンポーザー/リーダーのすべての面における実力が発揮されたパフォーマンス。ちゃぷちゃぷレコード原盤に、新たに日本語解説を加えて再発。
http://bishop-records.org/onlineshop/article_detail/EXIP0410.html
2016/02/18(木) 20:46:15 |
EXIP0410
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タンゴ・ピアニストの青木菜穂子さんのホームページがリニューアルしました。
http://celeste.phono.co.jp 「タンゴ・ピアニスト」という肩書にはなっていますが、それは「活動のベースがそこにある」というだけで、便宜的な事でしょう。実際には俯瞰的な視点を持つトータルなピアニストと言えると思います。クラシック、ジャズと来て、アルゼンチンではタンゴ楽団に在籍、日本ではオルケスタ・アウロラの組織者のひとり、渡亜してリリアン・サバより直にモダン・フォルクローレの指導を受け、最新作”Jacaranda en flor” ではタンゴとモダン・フォルクローレとオリジナルを並置した作品を発表。ラティーナ誌で何人もの批評家の方々が、年間優秀アルバムの候補に挙げるほどのものを作り上げました。
「しとやかな性格であるから、凄い事をやっているのに伝わらない面もあるのではないか」という話を、プロデューサーの徳永さんとしたのが数日前。リニューアルしたホームページも、自己宣伝的な文句を見つける事がほとんど出来ません。しかし、実際には上記の事を果たしてきた人物であり、”Jacaranda en flor” は、日本におけるアルゼンチン音楽受容史から見ても、ポストモダンの視点から見ても、価値ある仕事を果たした一枚と思います。青木菜穂子というピアニストに触れた事がない方は、一度ホームページを覗いてみて下さい。
2016/02/09(火) 14:53:47 |
EXAC012
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