
ご報告が遅れましたが、録音を担当させていただきましたCD『原田斗生 / To-i』が、レコード芸術2021年9号で特選盤に選出されました。ありがたい事に録音評も高く、レコーディング・エンジニアとして報われる思いがしました。文章をどう読んでもきちんと聴いて下さったご様子、これならたとえ厳しい評であったとしても納得できるものでした。評者の常盤清様、那須田務様、濱田三彦様、ありがとうございました。
録音やミックスの依頼が入ると、その作品を調べ、何をどのように録音するのが正解かを探し、ディレクターやミュージシャンの意図を汲んでサウンド・ディレクションをすり合わせ…と、完成までの長い時間をその作品やミュージシャンに捧げる事になります。だからひとつの作品が完成した時にはいつも疲労困憊、もう録音は今回で最後にしようと毎回のように思います。制作に入ると自分の音楽活動ですら全部止める事になるので、俺には人の手伝いをしている時間はもうない、自分の人生を生きろ、とすら思います。
しかし、自分の人生を一時的に預けてもいいと思える素晴らしい音楽作品となると、話は別です。いざ作品が完成し、プレスのあがったその作品を改めて聴いた時に、それがなにかを果たせた作品と感じる事が出来ると、また前を向く事が出来るようになる、この繰り返しです。題材さえ良ければ、録音エンジニアは大聖堂に壁画を書いたり、壁に仏像を彫り込む仏師と似た仕事なのだろうと感じるのですよね。記号化されない生きた現象そのままを最良の形にして後世に残すのですから、ある意味ではそれ以上かもしれません。山田唯雄さんもそうでしたが、この作品も間違いなく関わらせていただいて光栄だったと思えるセッションで、あるギタリストが幼少期から鍛え上げてきたものをぶつけてきた鬼気迫る演奏でした。
原田さん、遅くなりましたが、受賞おめでとうございます。仮に受賞していなかったとしてもこの作品の価値は音楽人が聴けば一目瞭然、なんら変わるものでもないでしょうが、それでもこの受賞で聴いて下さる方がひとりでも増えると良いですね。
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- 2021/12/23(木) 15:53:51|
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