先日お邪魔したスタジオ・ピオティータのオーナー・西澤新様から、古楽やアルメニア音楽を演奏なさるピアニスト・七條恵子さんによるコミタス・ヴァルダペット作品の演奏動画をお教えいただきました。
第一感して東方系のキリスト教音楽、アルメニア音楽全体に感じる哀愁とエキゾティズム、バルカンより東の音楽にある舞踊音楽の色彩、こういう所が耳に入ってきました。簡単にそれを言葉で語る事は、この音楽を冒涜する事になるのではないかというほどの深遠さを感じます。書籍執筆時に集中してアルメニア音楽を聴きこんだ事がありましたが、この独特の肌触りを言葉に還元して良いものでしょうか。例えば、6つの舞曲のひとつ「Yerangi」はHMP↓5を感じる所がありますが(ざっと聴いた印象だけなので間違えているかも)、これだけでも既にひとつの重要な主張、形にされた感情であるように感じられてしまいました。同じアルメニアの音楽家であるガスパリアンにもグルジェフにも、似た気息を感じます。音楽というものの在り方がすでに違う、これを理解するに宗教的知識と地域史ぐらいは知っていないと、重要な部分を逃がしてしまいそうです。無論、それを知っていればよいという事ではなく、そのようなものを知る所ぐらいしか始める手立てがないという程度の事なのですが。少なくとも、個人的な情緒や、あるいは形式論や技法が音楽の中心に音楽であるとは思われません。
コミタス自体が今のアルメニア音楽のルーツであるし、また彼自身が神学を学んだ音楽家であり、ジェノサイド経験者というアルメニアの負の歴史を実体験している人であり、それらがみな何らかの形で音楽に反映されているように感じられます。そしてやはり、表象形式としての音だけでなく、その先にある意味の領域を暗示させる音楽は、やはり特別であると感じます。この部分、音楽以外では伝達不可能と思うのですよね。言葉でないと暗示できないものがある事と同様に、音でないと伝達不可能なものの伝達、これは東方系の音楽に強く感じます。この音楽は形式としては正教会音楽よりもトルコ音楽色を強く感じましたが、精神性は宗教感情に近い所から来ているのではないかと感じました。
七條恵子さんのピアノがまた素晴らしいです。彼女のインタビュー(英語)も発見しましたが、そちらはまだ未聴。風邪が治るまでの間、コミタスの音楽をすこしギターでさらってみようかと思います。
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- 2017/11/23(木) 00:33:01|
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