Bishop Records blog

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2017.12.20 東京阿佐ヶ谷・喫茶ヴィオロン 吉久昌樹(g) 照内央晴(p) デュオ

20171220_Yoshihisa_Teruuchi.jpg 12月20日、阿佐ヶ谷ヴィオロンでの吉久昌樹(g) 照内央晴(p) デュオを観てきました。それぞれのソロ演奏とデュオの合計3セット、いずれもインプロヴィゼーションでした。インプロヴィゼーションといっても色々ですが、これはジャズ的なスケール/コード分解による演奏システムをベースにしたものでも、サウンド依存のものでもなく、楽句から大形式へ向かう構造化過程を踏んだクラシック的なアンプロンプテュでした。ショパンやリストの曲にこうした方法で生まれたと思われるものがありますが、これは私が最も強いと思っている即興演奏の方法です。そして演奏そのものは、構造に還元しえない直接的で感情的なインスピレーションに満ちたものでした。ここは極めて現代的でした。

 まず、吉久のギターが素晴らしかったです。ギターで大形式を構成する事は、並大抵ではありません。流れならどのような方法でも作ることが出来ますが、有契的な関係構造を作るには複数の声部を生み出さざるを得ない必要上から、クラシックギターが作り上げてきたメカニズムを活用せずにここに至るのは難しいです。そして即興演奏のギターの場合、このスタイルを取ることのできる演奏家は少ないです。この意味で、吉久の取り組みは音楽的に理に適っており、そして素晴らしいと感じました。
 そして、大形式を見事に形成するインプロヴィゼーションでありながら、それを構造に還元させないだけの表現力が、ピアノの照内の演奏にはありました。3セットのパフォーマンスのうち、デュオが出色であると私は感じましたが、こうした高度なスタイルをとるギター即興となると、ギターはどうしても構造に意識を奪われがちになるのではないかと思います。それを形式だけに還元させない強さを、照内のピアノから感じました。そこには楽音のみに還元されるような優等生的なひ弱さはなく、それは構造に組み込みえないサウンドや表現の強さと直情性として音にあらわれていました。インプロヴィゼーションの存在価値のひとつは、この「他の表象に還元できない部分」にあると感じさせられました。

 現在の日本の即興音楽の素晴らしさは、こうした大形式の構造を構築することのできる技術と作曲レベルを持つプレイヤー数が増してきている点にあると思います。背景には、日本を含む音楽大学に即興の科目が組み込まれて一定期間が経過した事、即興演奏というものがイデオロギーからもジャズからも切り離されて相対化して見つめられ始めた事など、様々な要因があるのでしょう。もし日本における即興音楽の中心が、こうした音楽性を持つものにシフトしていくのだとしたら、即興音楽は今までとは違った価値を持ち始めるかも知れません。そういう事を思わせてくれた、素晴らしいパフォーマンスでした。

http://bishop-records.org/onlineshop/article_detail/EXJP021.html


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  1. 2017/12/21(木) 12:00:31|
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