今年2月14日に、ヴァイオリンの後藤勇一郎さんの新作がリリースされました。Bishop Records はディストリビューションをお手伝いさせていただく立場です。
音楽界で活動していると、自分の嗜好とは違う音楽を扱う事になる事も少なくないです。それでも何にせよ関わりとなる音楽は、結構真面目に聴かせていただいている方なのではないかと思っています。
自分とは違ったコンテキストやパースペクティブを持った人であっても、真剣に音楽に取り組んでいる人の音楽というのは、何度も聴いているうちに伝わってくる時があります。裏を返すと、真剣さのない音楽は、好きなジャンルやミュージシャンであっても、まったく愛せなかったり。個人的には、音楽や芸術を(創造ではなく)観賞する時というのは、「今の自分は持ち合わせていないが、しかしその自分の価値観をより相応しい方向にリフォームしてくれるもの」に出会える事を最大の目的として接している気がしています。だから、「自分の枠の外」にある音楽に接する事が出来る機会というのは、大変に有難い事なのです。
そして、本作です。シチメンドクサイ音楽を推しがちであるBishop Records が如何にも推薦しなさそうな音楽なのですが、その本気度が素晴らしいと感じました。単純に、音を出すまでのプロセスが素晴らしい。ある曲に対し(殆どが自作曲でしたが)、ここまで楽器コントロールやアーティキュレーションを煮詰めてから録音に臨むという本気さは、音楽家として素晴らしい姿勢であると感じました。音の生かし方は、在野の音楽という枠で言えば間違いなく一流、と強く感じました。
一般的には、後藤さんはGクレフの創設メンバーとして知られているのではないかと思います。こういう枠で言えば、後藤さんは、ライト・クラシックとか、ポピュラー/フュージョン寄りのヴァイオリニストと思われているのではないでしょうか。また、私個人の後藤さん像は、たまにレコーディングスタジオでお会いしたスタジオ・ミュージシャンという印象です。ところが本作に関していうと、こういう先入観のすべてが邪魔と感じられました。演奏家や音楽家は、どうしてもワークとジョブを混在させながら活動する事になってしまうので、外から見て、その本質が分かりづらくなる事が多々あります。本作を聴いて、私個人は「後藤さんというプレイヤーの本筋は、実はここにあるのではないか」と強く思わされました。
後藤さんというヴァイオリニストに興味がある方がいましたら、ぜひこのCDを聴いてみてください。 (近藤)
http://bishop-records.org/onl…/article_detail/GDNL-0111.html
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2015/04/04(土) 10:09:47 |
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